2011年10月13日木曜日

怒りの炎は、静かに燃えて

沖縄からの帰りの飛行機。
生まれて初めて一番前の席に座ることができた。

どちらかと言うと空席が目立つ機内だったので、
3列シートの窓際に座った僕の横は空席だった。
通路側には男性が座ったので、
真ん中の席が空く形になったわけだ。

無事に飛行機は飛び立つ。
ベルト装着ランプの消える音が
安定飛行の体勢に入ったことを告げる。

すると次の瞬間、通路側の男性が
天井の荷物入れ(正式な呼び方がわかりませんが、
網棚っぽい場所にあるやつのことです)を開けたかと思うと、
MacBook Proと共に何冊かの書籍を取り出し、
彼と僕とのあいだの席に置いたのだ。

何も言わずに。

僕と彼との間にあるこの席は
いわば永世中立シート。平和の象徴だ。
自分も侵さないかわりに、相手に侵される心配もない。
そんな不文律がこの真ん中のシートにはあり、
このシートこそが調和を保っていると
言っても過言ではないのだ。

だけど、彼はその均衡を崩した。

気にしない人は気にしないのだろうが、
僕はこういうことで眉間にガッチリしわを寄せる。
間接的なデリカシーのなさとでも
言えばいいのだろうか。
こういう悪意がないというか、
サラッと無配慮なことをやる人間が、僕は断じて許せない。

静かな怒りの炎を燃やしていたのだが、
注意しようと思ったところで、
じゃあ何と言えばいいのかという問題が浮上する。

「そこはあなたの席じゃないぞ」か?
確かにそうだけど、僕の席でもない。
同じセリフで言い返されて、ゲームオーバーだ。

では「半分は僕のだ」か?
妥協案を探りに行っている時点で負けっぽい。
ましてや相手が納得してしまって「半分使ってください」と言われても
それはそれで困る。

なら「そこはみんなの席だ」か?
訳がわからない。中途半端に理屈を覚えた小学3〜4年生のようだ。
終わりの会が泥沼にはまって、
延々と帰れなかったあの頃を思い出す。

決め手を見つけられないまま、
隣に目をやると、その男性はMacを使って
肺のレントゲンを見ているようだった。
おそらく医師なんだろう。もしくは研究者。
ここで「インテリ」「金持ち」というバイアスがかかる。

そして、Macの背面には
子供が書いたらしきメモが貼ってあった。
「家族を愛してるアピール」というバイアスがさらにかかる。

弾き出される答えは「絶対に友だちになれない」だ。

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